ハワイ1日目

わが社の誇る自由社員旅行制度により、同期4名+先輩2名(+現地で重役1名と合流)でのツアーである。僕の海外旅行経験も4度目となり、出国手続きも慣れた。スーツケースは預けると面倒なので機内に持ち込んでしまうという技も覚えた。セントレアは初めてだったが、まあ、一緒だ。両替所で、3万円をドルにするか、300ドルを買うか、と迷っていたら「3万ドル」と口走ってしまい一瞬ぎょっとされた。
「300ドルください」
「紙幣の組み合わせはいかがなさいますか?」
「まんべんなく。」
普通に応えたつもりだったのだが妙に受けたようで、ぷっと吹き出された。

各座席にディスプレイが付いている機体に乗るのは初めてだった。なるほど、ここで映画が見られるわけか。左肘掛に埋め込んであるコントローラは引き出せるようになっていた。十字キーとカラフルな4つボタンで音楽やら映画やらショッピング(!)やら出来るのだが、よく見ると、十字キーとボタンの配置がテレビゲーム機のコントローラを連想させる。と思ったらテレビゲームも実際出来るようだった。レトロ感漂うゲーム類(80年代のセンスだ)をひとしきり遊んだ。操作の反応がやたら悪いせいで、単純なはずのゲームが高難易度になっていた。十字キーの方向によって効きの悪いものがあり、慣れてくるとそのリスクを見込んで操作する技術が身に付いた。映画は、自分の意思では再生できず、テレビのように一斉放映されている7チャンネルの中から選ぶというスタイルで、搭乗時真っ先にテレビゲームに挑戦してしまった僕は、どの映画も途中から見ることになってしまい、結局見なかった。アニメ版のバットマンをやっていて、それは途中からでもどうでも良さそうなので見た。

ハワイのオアフ島ホノルル空港に着いた現地時間で朝8時。常夏と聞いていたのにけっこう寒く、長袖を2枚重ね着しても落ち着かなかった。ホテルのチェックインは12時で、それまでHISのツアーコンダクタからいろいろと説明をされる時間が設けられた。漫才師まがいのおばちゃんで、一生懸命ネタを盛り込んで早口でしゃべりそこそこウケも取っていたが、如何せん不機嫌そうでちょっぴり怖いので僕は苦手だった。関西人と見た。
連絡用の携帯電話を受け取り、鯨ウォッチングツアーへの申し込みを済ませた後、11時ころに開放された。目指すはBeachComberホテル。ポリネシアンマジックショーで有名なホテルだ(見なかったけど!)。その向かい側にあったCheese Cake Factoryというお店で昼食。パスタとかピザとか、なんか肉の丸焼きとかフライとかポテトとか。ああアメリカ。ロンドンよりはおいしいが、まあ、ぼちぼち。
ブロンド髪のけっこう可愛い店員が軽快に応対してくれたのはなかなか心地よかったが、落としたコショウビンの蓋を気づかずに蹴り飛ばし、しかも蹴った瞬間は気づかず、少し離れたところで壁に当たる音を聞いて初めてはっとするのを見ると、日本の店員って質が良いのだな、と思ったりした。
ホテルで部屋を見た。割に質素な印象。まあ、必要なものは一通りそろっているので不自由はないけれど。

とりあえずハワイだし、ということで、ホテルから3分ほどでビーチに出て、海岸線を6人でぞろぞろ歩いた。縦一列で異様だったかも知れん。今日は18時からショーの予約を入れてあるがそれまで特に予定はない、ということで各自自由行動に。僕はAと一緒にALMANI EXCHANGEのお店を見に行った。日本では買えないんだ、といいながらAは5着ほど買い込んでいた。僕は1着も買わず仕舞い。

アロハシャツでも買おうかなと、適当に物色してみる。なんでこうド派手なんだ。擬音で言うと、「ばばーんっ」みたいなな。もっとこう、「しゃきーん」とか「しゅぱっ」みたいのが無いのかと。落ち着いた色彩のものは無いこともないが、なんかそれって既にアロハシャツではない。むずい。

Aと二人で通りを歩いていると、肩にオウムを乗せた男が立っていた。体長50センチほどのオウムは美しく迫力があった。僕が思わず見とれていると、彼はオウムを僕の肩に乗せてきた。僕がデジカメを構えようとすると彼がそれで撮ってくれるというので撮って貰った。Aとかわるがわる、ポーズをいろいろ変えながら5枚ほど続けざまに撮って貰った。オウムは賢く、僕は楽しんでいた。
「はい20ドルね」
不意に男が日本語を発した。うすうす何らかの詐欺的展開は予期していたので、払うかボケーと内心思いつつ、デジカメもちゃんと返してもらってるし、人通りも多いし、まあ大丈夫だろうと踏んで適当にジョークを言って立ち去ろうとしたのだが、Aはどういうわけか「いや、けっこう楽しかったし、オレは払うよ。」とか言い出した。まあそういうのなら仕方がない、一人10ドルくらいなら払ってやるか、と男に確認したら、「いや、一人20ドルだ」とか言われた。知るかボケーと内心思いつつ、そんなに持ってないとかなんとか言って二人で20ドルで済ませようと思っていたら、Aがどういうわけか「じゃあ間を取って15ドルだ」とか言い出した。いや、一緒に写真撮るだけで15ドルはないだろう、てかそもそも後から値段言うのがずるいだろう、と、いろいろ言っては見たものの、「15ドルと自分で言った。15ドルは払え」とか言われた。もうこの言い方が明らかに独特だが、Aは払う準備をしていたので僕も従った。カモにされたと思うのも癪なので、「わーいやったー」と思うことにした。写真は悪くない。ま、いっか。

17:50にホテル集合、徒歩3分で Cirque Hawaii劇場へ。12月にオープンしたばかりのサーカス系ステージショーである。Cirque du Soleil出身者が出演してるとか、O「オー」の関係者が舞台設計に参加してるとか何とか。入場前に6人で並んで出演者(っぽい)2人と一緒に写真撮影。入ってみると割に質素なつくり。席数は1000かな。近いです。近いのは良いことだ。
僕以外の5人はこの手の舞台は初めてだったそうで、常軌を逸したcontortionや超人的なバランス芸に何度も目を丸くしたようだが、exciteしたかというとどうもそこまでは至らなかった模様。確かに、音響がちょっとミスったり、場転がいまいちスムーズじゃなかったり、細々した所で気に入らない部分はあって、そういうちょっとしたミスが点々と発生することで会場の熱気は計算通りの上昇を辿れなかったりする。で、僕みたいな「ファン」っていうのは、そういう細かいミスを自動フィルタして見てしまうので、まあ、一人で盛り上がってるわけです。その方が得だと思ってるので良いのだけれど。

会場を出ると、先ほど撮影した写真が綺麗に台紙に収まって並んでいた。
「20ドルです」
なるほどね。記念写真は20ドルってのが、ハワイの相場らしい。本当はショーのプログラムとかサントラとかあれば買おうと思っていたのだが、「まだ出来てない」らしい。んな馬鹿な。仕方ないので写真買っちゃった。まんまとカモにされている。

ホテルの北側を回って東へとレストラン探し。Denny’sを素通りし、もうひとつアメリカチェーン店を無視して、OHANA EASTに収まっているレストランへ。
「日本語で注文できます」
あーやだやだ。店員もカタコトながら頑張って日本語を話す。カタコトなのが救いだ。流暢な日本語なんてここで聞きたくない。ひとりワンディッシュずつ注文。やり取りがいささか要領を得ないのを楽しむ。
「この、今日の魚料理って、なんですか?」
「はい、マヒマヒ魚Fishです」
つまりサカナサカナサカナってことらしい。情報量少ないな。「ワンディッシュでは2切れだけなので、6人では少ないです」みたいなことを言われたが、けっこういい値段するし、でも食べてみたいし、
他にもいろいろ頼んだし、と考えてそのまま発注。
「2切れだけ」とか言っておいて、日本の焼き魚定食とかで皿に乗ってくるくらいの大きな切り身が2枚やってきた。6人で分けてもまったく申し分ない量だ。サラダには基本的に野菜と同量の肉が盛られてくるし、肉料理にはマッシュポテトかフライドポテトがどっさりLサイズでついてくるし。これがアメリカですよ。ハワイはアメリカ。間違いない。
こっちも育ち盛り(嘘)の男6人組であるからして、謎の連帯感と責任感と義務感が生まれ、助け合いの精神でどうにか完食。謎の達成感に包まれていた所に、頼んでもいないタピオカが登場。本日のサービスらしい。それほど馬鹿げた量ではなかったものの、「生ぬるい」というとんでもない罠が隠されていた。甘くて生ぬるいタピオカ。嫌がらせか、挑戦か。(ちなみに僕はドクターストップでタピオカ免除ですよ)

ホテルへ戻ったのが23時。まだ寝るには早い。明日は上司と合流してオアフ島一周ツアーである。ここは是非全員アロハシャツで上司を迎えるべきだ、ということで満場一致し、最寄の土産屋へ。
僕は既に、今朝からかれこれ100枚くらいのアロハシャツを見たが、適度に知的で落ち着いていて、日本でも普段着られるような、という条件に合致するものは1枚も発見できずにいた。ところがこうして6人でぞろぞろとやってくると、なにやらテンションが変わり、競って派手なものを試着し始めた。
これが、思いのほかイケてる気がしてきたのが不思議だ。わずか半日で、色彩の価値観が転換してしまった。
結局そのテンションに飲まれたまま、正真正銘アロハなシャツを6人とも買い求め、ホテルへと戻るのであった。

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