bravia advert
CGの表現力が一般人の想像力を超える時代に突入してかれこれ2~3年ほどだろうか。シロウトが「こんな映像表現ができないかな」と思いつくようなことは全部実現できてしまっているという意味だ。その上をいった代表作が「マトリックス1」であろう。モーフィングの特殊な使い方で、時間を止めたままカメラアングルを動かすということをやってのけた。
あれ以来、アクション映画はそのスピード感の表現に独自性を出すために様々な技術的工夫を凝らすようになった。一方でファンタジーやSFモノはうっかりすると実物が存在するかのようなリアリティを持つに至りつつあるし、先日見たFinal Fantasy Advend Children は、生身の人間以上に魅力的な俳優、女優がフルCGの世界で実現してしまう日もそう遠くない、と予感させるものだった。プラトンの言うところの「イデアの世界」が実際に映像化できるのである。少なくともスクリーン越しには、生身の人間に勝ち目は無いといってよいだろう。
そんなCG万々歳のこの時代に、「スーパーボール25万個を実際に野外でばらまく」ということをやってのけたのが、Sony bravia のCMである。これだけ聞くととんでもない手間のかかることに思えるが、冷静に勘定してみるとおそらく同等のCGを作るより安いであろう。
安いだけではない。CGでは恐らく表現し得なかったことが、この映像には含まれている。倒れるドラム缶、はじけ飛ぶ木材、たたずむ犬のフシギそうな表情。「現実」という無限にopenな系において、計算を超えた事象が起きる。そうなのだ、せっかくのchaosも、計算機の中ではまるでカゴの中の小鳥のごとく。
Artistという偉大な人種がいて、次々と生まれる作品を見て、ようやく僕は「やりつくされたことなど、何一つない。」と、思える。