アーカイブ ‘ 2004年 1月

即興体験

2ヶ月ぶりで、インプロのワークショップが再開。いろいろ盛りだくさんの150分だったが、その中から2つほど、即興の産物を紹介しよう。

その1。無声劇。目の前にグランドピアノがあった。とても高級そうなものだ。慎重に鍵盤をたたいてみると、なにやらおかしな音がする。中を覗いて見ると、糸状のものが絡まっていた。指でつまみあげて、一度は床にぽいと捨てたのだが、気になってもう一度拾い上げてよくみてみると、これが結構長い。ほどいてゆくといくらでも伸びていきそうな糸くずだった。手ごろなものが無かったので鍵盤に巻きつけることにした。鍵盤の端から端まで、10回近く巻いたところで糸はすっかりほどけた。

さてようやくピアノを弾こうと思って鍵盤に向かった瞬間。それは、一度も見たことのない楽器だった。僕は右手で鍵盤を弾きながら、その上に琴の様に張られた横糸を左手で爪弾いた。

その2。女性の役でした。お金持ちの元カレは、私の欲しいものは何でも買ってくれたんだけど、なんでもお金で解決しようとするところがあって、そこがどうしても我慢できなくて、去年、お別れしました。そのちょっとあとに、とっても平凡な出会いから始まった今のカレは、貧乏だしちょっとドジな感じで間の抜けた人だけど、温かみのある素敵な人です。実は今日、私の誕生日祝いにって、カレが指輪をくれたのです。それは、以前私がつけていたものより、モノとしては劣るけれど、とっても嬉しかった。貧乏なカレにとってはかなり無理な買い物だったはず。どうやら、お兄さんにお金を借りたんだって。そのお兄さんと言うのが、、、

金持ちの元カレだったってことにその瞬間なっちゃって、「僕」は強烈なショックで10分くらいほんとに立ち直れませんでした。あー、お芝居でよかった。笑。

ヴォイス・トレーニング

「体全体から音を出すように」「遠くに投げるように」「空間を音で満たすように」「自分の体が風船だと思って」

定常波とかソリトン(固体波)とかを頭に思い浮かべつつ、いや、無理だよなぁ。。。とか内心思いつつ、でも、想像力を総動員して、めいっぱいイメージを膨らませて、実体の無い、霧状の「音」という概念を兎にも角にも発するのです。

するとこれが。まったくもってどういう因果かわからないけど、確かに自分の声が変わってくる。

例えば。「自分が土星だと思って声を出してください」とか言われたら、困るでしょう?ぜんぜん想像つかないし。10人集めてやらせてみたら、人それぞればらばらの発声をするに違いない。

想像の域を出ないという意味では、「空間を音で満たす」も、「土星のつもりで」も、無理難題には変わりないわけで、ひとそれぞればらばらであるのが当然ではなかろうか。ところが実際、空間を音で満たす、と言われて、なんとなく出来そうな気がしてしまうのである。すくなくとも、途方にくれてしまうほど意味不明な注文ではない。しかもその表現が、声楽の世界で一般的に用いられていると言う事実は、多くの人がその無理難題に対して近い「なにか」を想像し、実行するということである。

不思議だと思いません?

言葉の綾

「大学生と大学院生ってどう違うの?」「自分専用のデスクがあるのが院生で、無いのが大学生。」「じゃあ僕は中学院生だ!」

すみません、作り話です。

未来記憶

「大人になれば分かるよ」っていうのは、「僕は子供の頃のことは忘れてしまった」っていうのと同義だ。過去は記憶に残っているという錯覚。残ってなんかいない。今、この瞬間に感じてる五感の全入力のうち、ほんの一握りしか、残ってなんかいない。それが実は、未来に対する予測の的中率と同じ割合だ、と神様に教えてもらったとしても、今の僕はあまり驚かない。未来も過去も、現在と比べたら同じくらい分からないのだ。ただ、未来の無知には敏感で、過去の無知には鈍感だ。それだけのことだ。

と、ここまで書いて、自分の間違いにうすうす気付いてはいるんだけど、思想としては面白いし対称性が美しいので、これはこれでそっとしておこう。

急用

僕は大学で、産業セミナーというイベントのお手伝いをしている最中だった。19時。電話。

テレビ局。「今、マジシャンを探してまして。」「ちなみに、今、どちらで何してます?」「何時ごろこちらに到着できますか?」

あっという間のやりとりだった。20時。僕は局のロビーにいた。DVカムを持った製作担当の方と一緒に、コンビニやスーパーを7店ほど巡った。これ以上は業務上機密。22時。バイト代をもらって帰路。

まだ企画の段階なので放映はされないそうです。(残念ながら。。。)

Maria Cuore

佐吉人形展再び。(実はその後も数回行ったけど。)Cuoreはイタリア語で心臓、だそうです。恋月姫と天野可淡の作品を中心に、異様な空気が狭い空間を埋めている。前回の地下駐車場ほどの圧力は感じられなかったが、佐吉さんの展示センスはやはり強烈だ。29日まで。渋谷パークウェイビルB1にて。

RENT! entry!

台本芝居も一度はやってみたくて。発声法もきちんと勉強したくて。

ミュージカル出演者募集?Rentって、どんな話かもよく調べずにエントリィしたのが昨年末。合格率100%のオーディションで「さくら」とか歌って、台本を受け取る。AZTって聞いたことあります?AIDSの薬だって。あと、ドラッグと、ゲイとレズと、そんなそんな、現代アメリカンたちの話。正直、最初は抵抗ありました。あまりにも馴染みのない世界。

もらったMDを聞き込んで、台本を読み返すうちに、抵抗感は薄れつつ。役ももらっちゃったし!借金取りです。ちょっと悪役風。今日が最初の練習日でした。みんな歌上手だし。随所に思い入れの感じられる、なかなか良さそうなTeamです。

と、いうわけで、4/24.25はぜぇっったい見に来て!今すぐ手帳に書きましょう。「くぼーん借金取り」

ペリー来航

ほんと、なにかのネタかと思った。上野駅で白いワゴン車からメガホンの声。外国人風。

「神ノ恵ミヲ、カンジテクダサーイ。信ジル人ニ、恵ミ アリマス。日本ノ、苗字ニ メグミ アリマスネ。メグミサン、迫害サレタラ悲シイデスネー。メグミサン、大切ニシテクダサイ。」

がつっ(おそらくマイクを奪い取った音)「御通行中の皆様、神の国が・・・」

なんか錯乱したのかしら。苗字じゃないしね。

Rahmens!

遂に念願の初・生ラーメンズ。ちなみに麺類ではない。下北沢、本多劇場にて。

漫才からかけ離れた、二人芝居の世界。まったく新しいのにこの完成度。第14回目公演だというのに惰性になることなく、大きく趣向を変えることもなく、この新鮮さ。美しい。ぎちぎちに客が詰め込まれた会場で、身動きできない分笑うのが苦しかった。拷問みたいに可笑しかった。

近くの本屋で「ラーメンズつくるひと」という本を買った。いい生き方してるなぁ。二人とも。

正月早々

車の中の忘れ物を取りに行った。後部座席のアームレストの隙間に紙袋が見えた。中にはレモンが1つ。足りないぞ。紙袋からこぼれおちたのかな。見えない隙間に腕を伸ばして探ってみると、かさかさとしたものに触れた。ガムの包み紙か丸めたレシートか。そう思ってつまみ出すと。

セミの死骸だった。

ゾクっとした。生きたセミを素手で捕まえるのは平気なのに。死んでいるというだけで、予期してなかったというだけで、こうまで反射的な嫌悪感を感じるとは。防衛本能だろうか。

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